創造と共感の経済学-モノより思い出?

Sunday, January 28, 2007

創造性=多様性+相互作用

金正勲→岩渕潤子様

■多様性は創造性発揮の十分条件ではない
今回の岩渕さんのポスティングは、「相互作用の無い多様性」という状態をどう捉えるか、という問題かと思います。よく「多様性は創造性の発揮において重要だ」という話を聞きますが、もし多様性が多様性のままで、多様な部分同士の相互作用がないとすると、創造性の発揮は期待できないと思います。言い換えれば、同じ考えをする人が100人集まるよりも、異なる考えを持った人が10人集まった方が創造性が発揮される可能性は高くなりますが、もしその10人の相互作用がなければ創造性は高まらないということです。そういう意味では、岩渕さんが仰るとおり、一人よがりの孤立した自己流が蔓延したとしても社会全体の創造性が高まるとは期待できない、という点については私も同感です。

■情報の垂れ流しとWeb2.0
今日のような氾濫する情報の時代においては、メタ情報または評価情報と呼ばれる「情報に関する情報」は益々重要になります。情報を見極めるには自ら経験をするか、又は情報を見分ける目利き能力を持つことが必要ですが、情報量が膨大になっている現在、それは簡単なことではありません。財の性能や品質が安定的なコモディティの場合は、生産者側と消費者側の間で情報の非対称性が低いために評価情報が持つ価値はそれほど大きくありませんが、コンテンツのような経験財的な性質が強いものについては、既にその財を消費・経験した人々による評価情報というのは‘潜在的‘に重要な意味を持ちます。ここで‘潜在的‘というのは、岩渕さんが心配されているように、評価情報が単なる自己表現の産物としてブラックボックスの中に垂れ流しされてしまうリスクがあるからです。ただ、Web2.0に代表されるような一連の流れは、そのような垂れ流される運命にあった個々の評価情報が、データベースに蓄積され、且つ検索されることで、再利用を可能にしました。Web技術の発展によって、今まで消費主体に徹してきたユーザーが、今や自らコンテンツを創造し、それを瞬時にグローバルに配信できるようになった。つまり、誰もが創造や配信の主体になったことで、情報やまたその情報に関する情報(=評価情報)が豊富になり、さらにそれらを検索可能にする(グーグルのような)技術的手段が登場した結果、人間の創造性の発揮がより促進される環境が整備されたわけです。

■豊饒の経済の主役は、「評価情報」と「検索技術」
最近、ロングテールという現象が注目を集めていますが、それを理解する上で重要になる概念の一つに「豊饒の経済(Economics of Abundance)」というものがあります。ここで豊饒とは、「(有形財や無形財を含む)財ではなく、その財に関する情報、つまりここでいう評価情報が豊富になったことを指します。よくamazon.comが例として挙げられますが、まずここで重要な点は、評価情報を展示・陳列できるスペースが無限になったことです。それによって、今まで物理的な陳列スペースに収まりきれなかった財が陳列可能となり、さらにその無数の財から、関連情報・評価情報の検索を通じて、個々のユーザーにカストマイズされた情報や財が入手できるようになりました。その検索技術やリコメンド技術の発展によって今まで認知されなかった財やサービスが消費者の関心を集め、販売に繋がる。言い換えれば、今まで埋もれていたニッチ財が発掘され、ヒットにつながる可能性が生まれたわけです。

■ブログのコメント欄
余談ですが、私のゼミの学生が、学内のメディア関連研究所に入所する際に、面接で「あなたをメディアにたとえると何ですか」という質問に対し、「ブログのコメント欄」と答えたそうです。それはなぜか、との問いに対し、彼女は「コメント欄はメッセージの一方通行ではなく、双方向のコミュニケーションの場を提供するメディア」であるからと答え、見事合格したそうです。ブログがそれ以前のメディアと異なる点は、トラックバックやRSSといった「双方向性を自動化」することによって、自己完結ではなく、コミュニケーションを促進する仕組みを取り入れた点ではないでしょうか。そういう創発的な相互作用の可能性をブログのようなWeb2.0メディアは秘めている点が興味深いと思います。

さて、Second Life、そろそろ日本上陸です。一ヶ月に数百万ドルが動き、米国議会はSecond Life内で儲けたユーザーに課税を検討しているとか。この一連の流れ、岩渕さんはどうお考えですか。

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